リロケーションダメージ | - 2007/09/05(水) 04:46:25
- 結構前のことになるけど、とある行政官の方に「移り住みは認知症高齢者に良くないので、グループホームでターミナルケアを行うのは当然(=どんな状態になっても転居させるなってこと)です」と、トンチンカンなことを語られたことがあった。
ターミナルケアに取り組む理由が「移り住みが良くないから」なんていう呆れる発言・・・・・、と言うかターミナルケアと移り住みをごちゃ混ぜにする考え方は「こいつ分かってねえなぁ」と無視すりゃいいのでどうでもいい。
と言うことで、今回は、移り住みについての僕の考えを書こうと思う。
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「リロケーションダメージ=移り住みの害」
皆さんに「自分が初めて職場に出勤した時のこと」を思い出してほしい。
周りは知らない人だらけ。 自分は何をすればいいのか分からない。 どこに何があるのか分からない。 おしっこがしたくなったって、トイレの場所が分からない。
引越しをした時はどうだろう???
引越しをした時でも困り果てる。 家の中は自分が住む場所にしようと選んだところだからいいにしても、自分が生きていくために必要な社会資源(スーパー、コンビニ、その他いろいろ)は、自分の家の周りのどこに何があるかよく分からないので、引越しした当初は生活していて困るし不便を感じる。 更に、自分の家の近所にはどんな人が住んでいるか分からない、自分の家がある街のルール(ゴミ出しの日など)が分からないから、不安をもったり、不便を感じる。
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と、まあ人間なら誰だって(認知症の状態でなくても)知らない環境に置かれると、不安や混乱が襲ってくるし、生きていくことに不便を感じる。
それを人間は、場所や他人(自分に影響を及ぼす環境や人間)を記憶したり、認知していくことで解消していく。 更に、記憶し認知したものを、自分が生きていくために利用したり、自分の意思を行動に移す上で活用していく。
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じゃあ、人間は場所や他人(自分に影響を及ぼす環境や人間)をどうやって記憶したり認知したりするのか?
自分が持てる機能や能力を発揮して、誰かに教えてもらったり、自分なりの目印を見つけたりして「情報」を収集し、忘れないように何かに書き留めておいたり、見たもの聞いたものを脳に直接刷り込ませておいたりする。
これが、記憶や認知といった機能や能力に障害を持つ認知症の状態にある人にはなかなか難しいことなのだ。
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僕から言わせたら、人間だったら誰だって(認知症の状態にあるとか関係なく)環境を変えられたり、新しい環境に自分が置かれたら「リロケーションダメージ」を受けるのは当たり前。
そして人間はそのダメージをより最小限にするために、自分の持てる機能や能力(技)を発揮しているけど、認知症の状態にあったら、そのダメージを解消していく技がうまく使えないのも当たり前なのだ。
だけど「認知症の状態にある人の移り住みはリロケーションダメージを受けるから良くない」なんて、声高々に言う専門職が多い。
専門職なら、認知症の状態にある人の移り住みによって生まれる障害を「任せとけ!」と迎え撃ち、解消するのが仕事だと僕は思うのだが・・・・・。 だって、人間なら誰だってリロケーションダメージは受けるし、認知症の状態だから、そのダメージを解消をする技が上手く使えないのだから・・・・・。
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24 時間、365日、いつどこでどんなふうに生活への障害が出るか分からないからこそ、点(ポイントポイント)の支援ではなく、線の支援が必要な認知症の状態にある人たちに「リロケーションダメージを受けるからって移り住みは良くない」なんて言っていたら、認知症の状態にある人はグループホームにすら入居できない。
それでは、すでに自宅ケアで支えていくには限界が来ている認知症の状態にある本人や家族は、身も心もボロボロに壊れ、共倒れしてしまう。
いいかげん「認知症=リロケーションダメージを受ける。だから移り住みは良くない」っていう考えをなくしたいものだ。
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